逆算思考の重要性

皆さん、1度は予定表(スケジュール)を作ったことがあると思います。

仕事の納期の日が決まっていれば、その日から逆算して、いつまでに何を仕上げるかをおおまかに決めたあと、ある程度細かくスケジューリングして、予定全体が見えるようにしていくのが定石です。

これはそのまま、大きな買い物や人生設計にもあてはまります。

例えば家の購入。

多くの人は、間取りや外観、住宅ローンの借入に大きな時間を割いて、家の完成/ローン開始をゴールとしたスケジュールを作りますが、

家は建ってから、何10年も税金や返済を払い続けるもの。

現在の、1%という超低金利下であってさえ、30年もローンを払うと総支払額は購入価格の1.4倍近くになります。(エクセルで、=(1.01)^30と打てば、すぐ出ます)

1.4倍と言えば、例えば7000万円の住宅ローンを組むと、2000万円がローン金利ということです。(5000万円(家の価格)×1.4=7000万円)

つまり家の購入前に、ローン支払い完了をゴールとしたスケジュールを作成し、
・土地・建物の名義を誰にすれば、トータルで支払う税金が安くなるか
・住宅ローン控除を最も有利に受けられる借入れ方法
・金利が安く、繰り上げ返済等の手数料や手間が簡単な金融機関
を決めてから、その条件の中で最適な家を購入するのが正解です。

ちょっとした間取りの変更で数10万円高くなるのを悩むより、税額控除という超有利な住宅減税や、早めの繰り上げ返済で、数100万円節約する方が、はるかに有意義だということが見えてきます。

こういう見方が身につくと、人生設計も違った景色で見えてきます。

例えば平均的なサラリーマンの場合、生涯年収は2~3億円といわれていますが、
その3億円のうち、税金・社会保険で2割(6000万円)が天引きされるので、残りは2億4千万円。(読むのが面倒くさい人は、横ラインの間を飛ばしてください)


 

都会で5000万円のマンションを買ったとすると、ローンを組むとトータル返済額は1.4倍の7000万円、メンテナンス費用や地震・火災保険で1000万円くらい掛かるので、残りは1億6000万円。

子供2人を育てると、2人合わせて平均4000万円、つまり残高は1億2000万円。

22歳で就職して65歳で定年とすると、サラリーマン人生は、65-22=43年。

食費、水光熱費は、総務省の家計調査報告(2019.4~6月期)から、96000円/月×12か月×43年で5000万円。

同じく通信費(スマホ・通話代)、交通費の支出は合わせて40000円/月 ×12か月×43年で2000万円。

さらに、保険や車に掛かる費用が概算で、約3000万円。

これらを引くと、65歳時点の残高は3000万円ですが、
実際には家電製品や家具を買ったり、家族旅行に行ったりで年間30万円使うとすると、この半分位になってしまいます。

生涯年収が2億円の場合、家を買わずに月額7万円の賃貸住宅で、7万円×12か月×43年=3600万円。都会の場合、子供も1人というのが現実的です。

この場合、43年で割ると、年間10万円も残りません。

この中から家具・家電製品、レクリエーション費を捻出しようとすれば、1人の労働力だけでは賄いきれず、必然的に共働きになります。

こんな状態では、まともな貯蓄なんてできる訳がなく、老後の蓄えは退職金のごく一部、となります。


 

見やすくするために、表にまとめてみましょう。

①生涯年収(43年/退職金含)3億円2億円
②税金・社会保障費-6000万円-4000万円
③居住費+維持費等-8000万円(購入)-3600万円(賃貸)
④子育て・教育費-4000万円(2人)-2000万円(1人)
⑤食費・水光熱費 -5000万円 -5000万円
⑥通信・交通費-2000万円-2000万円
⑦生命保険・自動車関係 -3000万円 -3000万円
⑧65歳定年時の残高 3000万円400万円
⑨ ⑧の年間余剰資産70万円/年9.3万円/年
⑩ ⑨の月額余剰資金5.8万円/月0.8万円/月

注)実際には⑧の残高の中から、43年間の家具・家電製品代、交遊費、家族旅行代が引かれる。

この表から得られる教訓は、

普通の人生を普通に過ごせば、不安な老後が待っている、です。

では、どうすれば、安心できる老後が迎えられるのでしょうか?

上記の中で、特に大きな割合を占める、②税金類(6000万円)と、③住宅関連費(8000万円、3600万円)の負担を軽くできれば、ずいぶん楽になることが見えてきます。

次記事へ

前記事へ