個人事業主という生き方2

前回、夫276万円、妻96万円の世帯年収が、年収465万円のサラリーマンと同じ手取りになる話をしましたが、そのからくりを説明します。

例によって、読むのが面倒な人は、下の表まで飛んで確認してください。

まず妻は、基礎控除38万円と、給与所得控除65万円(パート収入)の合計以下なので、所得税はかかりません。0円です。

夫は、給与所得者ではないので、開業届を出して小規模企業共済に入れます。合わせて国民年金基金iDeCoも入ることができます。

これらはいずれも掛け金が所得控除できるので、それぞれ最大限の掛け金にすることで、84万円+81.6万円、合わせて165.6万円分が所得控除されます。

青色申告(10万円)も、はじめに申請書1枚出しておけば、確定申告時に毎年、10万円を所得控除できます。合わせて国民年金の控除も忘れずに。

ここで、これらをまとめて表にします。

年収(万円)276(夫)103(妻)
基礎控除 -38-38
扶養/給与所得控除-38-65
小規模企業共済掛け金-84
国民年金基金+iDeCo-81.6
青色申告控除-10
国民年金控除-19.5
生命保険料控除-4
扶養控除(親)-38(-58)
控除後の所得金額00

注)小規模企業共済、国民年金基金、青色申告、所得控除など、これらの言葉を初めて聞く人もいるかと思います。難しいと思ったら、直接税務署に出かけて聞いてください。私も3回聞きました。いずれも1対1で丁寧に説明してくれました。
また、多くの市町村には月1回、無料で税理士、弁護士等に相談できる仕組みがあります。役所に電話で問い合わせても良いでしょう。まずは自分から行動することが大切です。

夫婦とも、所得控除後の所得が0円なので税金がかかりません。ここがサラリーマンと大きな違いです。

この違いが何から生じたかというと、先に記載した共済と基金とを合わせた、165.6万円の所得控除。

サラリーマンが銀行に年間165.6万円預金しても、一切控除は受けられませんので、これは個人事業主の特権です。

でも収入276万円のうち、165.6万円も掛け金につぎこんだら生活できない!

そんなの声が聞こえてきそうですが、基礎控除と給与所得控除は、実際には自分の手元に残るお金ですから、税金や社会保障費を引かれたあと手元に残る100万円程度は、生活費に充てることができます。

親と同居のため家賃不要、食費・水光熱費が折半なら、これで充分生活できるはずです。

それでも不足する場合は、月7万円の共済掛け金を下げれば良いですし、奥さんがバリバリ働くつもりなら、奥さんも開業届けを出して、夫婦で個人事業主になる手もあります。

なお、小規模企業共済の場合、20年間掛けると、掛け金は120%になって戻ってきます。

子供にお金がかかる10年間(中学から大学卒業まで)は、掛け金を最低の1000円にするとして、その期間以外、7万円を20年掛けると、84×20×1.2=2016万円になります。
これは、廃業時や共済を解約したとき、退職金として戻ってきます。

これは、世帯年収が300万円代だとしても、サラリーマン時代と同等の退職金相当のお金を自分でためられるという事です。

小規模企業共済や国民年金基金,iDeCoは、予定利率1%で国が運用・保証している金融商品。掛け金も全額が所得控除できる、考えられないほど優良な金融商品です。

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