宇宙際タイヒミュラー理論って、足し算と掛け算の関係性を解明した理論だった

数年前、数学の超難問であるABC予想を日本人が解いた!と話題になりましたが、解いたとされる論文が超難解だったため、いまだに査読が続いています(2021/4/4現在)。

でも、ABC予想自体は比較的、容易に理解できるものです。

また、この説明の後半に書きましたが、このABC予想は、足し算と掛け算の根源に関わる関係性を示唆しており、まさに哲学的な要素をもっています。

まずABC予想とは何か、をおさらいしましょう。Wikipediaによると、

a + b = cを満たす、互いに素な自然数の組 (abc) に対し、積 abc の互いに異なる素因数の積を d と表す。このとき、任意の ε > 0 に対して、c > d1+εを満たす組 (abc) は高々有限個しか存在しないであろうか?

これを判りやすく、日本語に訳すと、

というもの。

1+8=9という式を素因数で書くと、1+23=32 になるが、この素因数部分だけの積(1x2x3)をdとおくと、d=6になる。これは、9>6となって、こんな組み合わせは無限にある。
でも、9>61.1みたいに、dを1乗よりちょっとでも大きくすると、これを満たす組み合わせは、有限個しかなくなるんじゃね?

ちなみに、d=1なら無限に解がある、とは、例えば、a = 1,  b = 32n − 1, c = 32n の組み合わせの時は、

n=1のときは、上に示した、1,8,9の組み合わせ、

n=2のときは、1、80、81になり、a+b=81、80=24x5、81=34 なので、d=1x2x5x3=30より、81>30

のようなって、nの数だけ、つまり無限にある、ということが証明されています。

こんな関係式の、どこが凄いの?と思ったあなたに、ここでいきなり質問。

足し算の性質って何? 掛け算の性質って何?

って聞かれて、正しく答えられますか?

掛け算って、足し算を簡単に表記するための、足し算の上位互換みたいなもんでしょ?
5+5+5+5を、5×4と書くみたいに。

そうなんです。私もそう思っていました。でも実は、足し算と掛け算って、根本的に異なる概念なんです。

例えば、自然数nに、ある操作aをしても元の自然数nのままであることを、足し算と掛け算であらわすと、n+a=n、 nxa=n という式になります。

これを満たすaは、足し算の場合は0、掛け算の場合は1です。

試しにこれらを逆転させて、掛け算に0を掛けると全て0になってしまいます。

足し算で1加える操作をすると、1,2,3,4・・・となり、自然数になります。

このように、自分自身を保存する操作に用いる数が異なるというのは、大きな違いだと思いますが、もっと面白い例を示しましょう。

自然数(1,2,3,4・・・)を、足し算と掛け算で表してみましょう。

足し算の場合は、先ほど書いた、n+1 ですね。では、掛け算で表すとどうなるでしょうか?

それは、1と素数の積で表わせるんです。

2=2*1
3=3*1
4=2*2
5=5*1
6=2*3
7=7*1
8=2*2*2
9=3*3
10=2*5

どうでしょう?結構、目からうろこって人が多いんじゃないでしょうか?

9,10,11という連続した自然数も、掛け算で表すと、

9=3*3
10=2*5
11=11*1

というように、全く規則性のない組み合わせになってしまいます。

連続した自然数を掛け算で表すと、どんなに数が大きくても、規則性は無いそうです。

おわかりでしょうか? 足し算と掛け算は、こんなに違うんです。

でも、5+5+5+5を、5*4で表せるように、関連性があるのも事実です。

また、log(a*b)=log(a)+log(b)のように、足し算と掛け算とを交換できたりもします。

abc予想をもう一度書くと、

a + b = cを満たす、互いに素な自然数の組 (abc) に対し、積 abc の互いに異なる素因数の積を d と表す。このとき、任意の ε > 0 に対して、c > d1+εを満たす組 (abc) は高々有限個しか存在しないであろうか?

これは、

足し算(a + b = c)と、掛け算(互いに素な自然数の組 (abc)の素因数の積 d)の関係性を解き明かす作業

ということが分かります。

この関係性を30年以上、だれも解き明かすことができず、やっと解き明かした理論が、超難解な理論だった、ということは、

足し算と掛け算は、まるで墨流しのように、水と墨という異なるものが複雑に交じり合っていて、abc予想とは、それらが示す一定の模様から水と墨とを分離する、とてつもない作業だと分かります。

ー追伸ー

この文章を書いているうちに、以前に本で読んだ、数の哲学的な考えを思い出したので紹介します。

3+4=7

みなさん、この式を見て、何か思うことはありますか?

ただの足し算じゃん。

そうです、ただの足し算の等式です。

=(イコール)をはさんで、左辺と右辺は等しい。そう習ったと思います。

でもこれって本当に、左辺と右辺は等しいのでしょうか?

左辺には、3と4という、2つの情報があります。

右辺は7という情報だけで、この7からは、もはや、3と4という情報は得られません。

ある2つの数を足して7になる組み合わせは無限にあり、その無限の中のたった1つの組み合わせ、3と4との和という情報は、完全に失われているということになります。
(例えば、4.1+2.9=7、-2+9=7 など、無限に考えられます)

つまり、3+4=7は正しいが、7からは、もはや 7=3+4 だけを導くことはできません。

これは、お湯にスティックコーヒーを混ぜてホットコーヒーを作ったら、もう元に戻せないという話ではありません。お湯を蒸発させればスティックコーヒー成分だけ分離できます。

足し合わせる前の情報が失われるとは、例えば、300mlのコップと400mlのコップに分けて入れていた水道水を、混ぜ合わせた状態です。

700mlの水から、300mlのコップの中にあった水だけを分離することはできません。

3+4=7

この左辺と右辺に、とても深い溝を感じるのは、私だけでしょうか?

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です