もう5年も前になりますが、 理研から2014年1月に発表されたSTAP細胞論文は、世界中にセンセーションを巻き起こしました。
その後の顛末は皆さんご承知のとおり、論文に不正があったため取り下げたり、どこの機関もSTAP細胞を再現できず、結局、STAP細胞は無かったことになっています。
でもここで、興味深い統計結果があります。
STAP細胞の論文が掲載されたNatureから、科学実験の再現の確実性に疑問符が投げかけられていたのです。
この発表は、アメリカやドイツで、STAP現象を確認した、との発表が相次いだ2016年に発表された、とても興味深いものです。
資料では、1576人の研究者に、実験の再現性についてどう思うかに対し、52%の研究者が重大な危機的状況にある、38%の研究者がやや危機的状況にあると回答しています。
つまり、90%の研究者が、実験再現性につき、何らかの疑問を持っていることになります。
現象に再現性があるかどうかは、まさに科学技術の根幹。ここに90%の科学者が疑義を示したわけです。
医学や生物の分野は、確かに個体差や年齢差などでブレが大きくなる気がします。
しかしこの統計では、 医学の場合は何と、100%の再現は皆無、50%の再現性しか得られない事が最も多い結果となっています。
そして自分以外の論文の再現試験において、すべての分野で、科学者の半数以上が、1度は再現に失敗していることを経験しています。
化学分野においては、90%の人が再現に失敗していて、自分の論文ですら60%以上の人が再現に失敗しているって、どういうことでしょうか?
natureのHPにある紹介ビデオでは、例えば液体をかき混ぜる時、
フラスコを振るか、棒でかき混ぜるかの違いで、実験結果に差が出る場合があるとのこと。
このレベルになると、実験場所の蛍光灯の明るさの違いや、建物の地下と3階との微細なゆれの違いが細胞のストレスの有無になって、実験結果の差になるかもしれません。
でもSTAP細胞の場合、論文発表者が同じ施設で再現試験しても再現できなかったので、存在しないと結論付けるのは、妥当と思います。
科学実験が高度化すると、再現させること自体、とても困難な事なんだなってことがわかります。