起こらなかった事件の見積りは可能か?

福島第一原子力発電所事故から10年目に入った今年、コロナウィルスによる未曾有の世界感染拡大が起きました。

いずれも、自然災害がきっかけですが、必要な安全対策の先送りや、発生後の対応のまずさにより被害が爆発的に拡大した、人災の側面も否定できません。

人災であれば、必要な安全対策が必要だと分かったとき、また自然災害の発生直後にどう対応すれば良かったのでしょうか?

いずれにも共通して言えることは、対応を決める時、対応を実施している最中は、その対応が正解かどうか誰にも分からないという事です。

しかし、物事には必ず最適解はあるとされています。

福島の原発事故の場合、地震直後に2,3号機には海水を注入して安全停止させる事が最適解だったとされています。(日経tech

コロナの場合は、李医師がアウトブレイクが疑われることを報告した際、中国政府はそれを隠蔽せず、世界に知らせるべきだったとされています。(JBpress

隠蔽の方は論外としても、もし原発事故で原子炉に海水を注入した場合、炉は確実に廃炉になります。

もし2,3号機が海水注入で安定停止し、原発事故が1号機だけの事故で、被害が今よりずっと軽微であったなら、海水注入で数10~数100億円の損害を選んだその責任者は、マスコミから厳しく追及されたでしょう。海水注入は本当に正しい選択だったのかと。

しかし、廃炉の数100億円の損失と引き換えに、本来起きるはずだった(実際には起きた)最大81兆円の損失が防げた可能性が高いのですから、本当は称賛されるべき行動です。

しかし、大事故を防いだことでその事故は起こらないため、誰もその判断のすばらしさを知ることができず、厳しい追及だけが残ってしまうわけです。

ここに、重大判断の難しさがあります。

正解(最適解)は必ずあるはずなのですが、それが何かは、ずっと後にならないと分からない。と言うより、正しい解を選んだ場合でも、それが正解だとは分からないのです。
(先ほどの、海水注入で最小限の被害に留まったとしても、本当は海水注入は不要だったのでは?と厳しく追及される状況ですね。)

また、海水注入したとしても、もしかしたら緊急停止直後に思いもよらない海水との化学反応で、炉が圧力爆発を起こして、今よりひどい状況になっていた可能性もゼロではありません。

中国政府が新種のウィルス発見を世界にすぐ報告していたとしても、欧米にとって中国は遠い国の出来事。情報を知っても生活スタイルは変わらず、結局今とほとんど変わらない悲惨な状況だったかもしれません。

これらも実際には選択されていないので、本当にそうなったかは分かりません。

私たちにわかることは、数ある選択肢のうち、この選択肢を選ぶとこうなった、という事実だけです。

そしてその選択にあたり、一定の条件下でそれが起こる確率は計算できます。

実社会では、大企業に入って良い給料を貰える確率は、高卒より大卒の方が、Fランク大学卒より有名大学卒の方が高い、という計算はできますが、実際にそうなるかは本人の努力や周りの環境といった条件、更には運や偶然などに左右されます。

正解は必ずあるはずだが、それが何かは誰にも分からない。

そして結局、

自分が選んだ選択が正しい選択だった、とするしかないのです。

なので、どうせ一寸先が闇なら、テキトーに生きるか、確率を常に高めておいて、少しでも良いチャンスをつかむ努力をするかは、本人の人生哲学だということになります。

あなたはどちらのタイプですか?

‐追記‐

昔、大凡人(だいぼんじん)を決めるバラエティー番組がありました。

一般人100人を集め、2択問題で回答者の多かった方を残し、残り人数が少なくなると、クイズで回答者が多かった答えの方を選んだ人が勝ち残るというゲーム。

例えばA/Bの2択回答で、Aが55人、Bが45人だった場合、Aの55人を残し、残りが10人程度になると、日本では犬派が多いか猫派が多いか?のようなクイズで、多い方を選んだ人が残る。という具合。

つまり、凡人的な回答をし続けて残った人が「凡人中の凡人」ということで、大凡人になるという番組です。

でも考えてみると、大凡人に選ばれるということは、100人を勝ち抜いた特別な一人になるということ。そんな人が真の凡人であるはずがありません。

「真の凡人」は、おそらく2,3問目くらいの、多くの人が脱落する中に紛れ込んでいるはずです。だって、勝ち抜けないのが凡人だから。

つまり、選ばれるという特別な状態になった時点で、その人は本当の凡人ではなく、本当の凡人は選ばれない人の中にいるので選びようがない。

いるはずだが誰かは特定できない。ということになります。

特定できない、特定すると別モノになってしまう、確率でしか語れない。

こんなところに量子力学と同じ考え方が出てきて、不思議な感覚を覚えます。

Ein stein

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