何年か前まで、有名大学の若手講師や准教授、有名コンサルタント会社の元社員などが、コメンテーターとしてテレビの討論番組に良く出ていました。
ところが最近見かけなくなったと思っていたら、Youtubeの番組で、こっぴどく論破されて、しどろもどろになっている映像が大量にアップされているではありませんか。
昔から、きれいごとと、あるべき論のオンパレードに違和感を持っていたので、小手先のテクニックが全く通用しない、本音と実力をぶつけ合うネット番組映像を、爽快感を持って見入ってしまいました。
知っている人は、2ちゃんねる創始者や知事・市長経験者の映像のことだな、と分かると思います。
いくつかの映像を見ていると、論破する側とされる側とで、リアリティと分かりやすさに圧倒的な差があることに気がづきます。
論破される方は、教科書的な、どこかで聞いたことのある表面的な事を言っているのですが、論破する方は、実体験や説得力のある数字や事実で攻めてきます。
映像が始まってから1分で勝負は明らか。後は可哀そうな状態がひたすら続きます。
でもテレビでは、あれだけ威勢の良いコメンテーター達が、どうしてこんな状態になってしまうのか、考えてみて気づきました。
やられている方はほとんどの場合、実業をあまり経験していない評論家か学者さんです。
もちろんコンサルも大学も厳しい世界だとは思いますが、実業や現場の厳しさとは質が違います。
わたしは一度、業務用のクラウドシステムの立ち上げに携わったことがあるのですが、要件定義やシステムテストの大変さと、実地でのアクティベーションの大変さは、全く質が異なります。
前者はトラブルが起きてもほとんどの場合、理詰めで解決できますが、後者は何が起きるかわかりません。
例えば、WiFi経由でデータを収集するシステムの場合、顧客の店を一軒一軒回って装置を店の無線LANと接続するアクティベーション作業が必要なのですが、マニュアルには、
「SSIDとパスワードを設定して、接続確認して終了」
と書かれているだけです。
全くそのとおりで、普通、何の問題もなく接続する”はず”ですが、実際はそうはいきません。
某国では、WiFiアナライザーで電波状態を確認すると、
・何10本アンテナが立っているか分からないくらい電波が混んでいる。
・全く同じ名前のSSIDが4,5本あって、どれとつながるか全く分からい。
・ SSIDが、どうしても入力できない中国語で書かれている。
・回線が異常に遅く、よく見ると2G回線でアンテナが立ったり立たなかっり。
なんて事はしょっちゅう。
極め付きは、端末を店のルーターにつないだとたん、アダルトサイトが表示されて工場出荷モードに戻すしかなくなったこともありました。
お分かりでしょうか?
日本のIoTはかくあるべきだ、とエアコンのきいた大学の教室で構想を練る事と、
言葉も分からない異国の客先で、ウィルスに感染してしまった端末片手に今日一日をどう乗り切るか決めないといけない修羅場との違いを。
前者は前者のリングの中で戦うべきであり、後者のリングで戦っても絶対に勝てません。
意地悪な例えですが、プレステの格闘技ゲームがすごく上手で、ネット対戦でも1度も負けたことがない人がいたとします。
その人が、実際のボクシングの試合を見に行って、”あんな試合見てられないよ、あの場合は絶対に右ストレートだよ” とか言っているようなものです。
じゃあ、実際にリングに上がって戦えば?
もしリングに立った場合、結果は見えていますよね。でも、リングに上がってしまう人が多いという事なんです。
だって彼らにとって物事は、シミュレーションや理論のとおりに動く”はず”だから。
で、こんな ”はず” じゃ無いのに、となります。
評論家は、すでに存在するものや仕組みの批判・分析は得意ですが、その批判・分析をもとに、新しい物や新しい仕組みを作り出す作業はしません。
加えて、彼らは単に個人の集合であり、組織の運営や革新もできません。
評論家が起業して実績を挙げたという話は聞いたことがないし、コンサルタントを使いまくった企業の業績が継続的に良くなった話も聞いたことがありません。
もちろん、慣れない事や良く知らない事は、専門家やコンサルタントの助けが必要なこともあるでしょう。
でも彼らからは、回り道をしないための「時間や情報」を買うのであって、決して「結果」を買っているのではないことを、肝に銘じる必要があります。
得られた「時間や情報」自体はコストです。これらを判断して、バリューに変えるのが自分での仕事であることを忘れてはいけません。
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