タイトルだけ見ると、何の事かさっぱりわからないと思いますが、説明されると科学技術の素晴らしさに感動を覚えます。では早速説明します。
世の中には、千分の1(1/1000)℃の温度差が測定できる装置があります。
その名は ”高精度赤外線カメラ”。
そんなわずかな差を見てどうするの??と思うでしょうが、これは工業的にも軍事的にも、とても重要な事なんです。
まずは過去に関する話から。
例えば、他国の軍事活動を把握するため、昨夜特定の場所に戦闘機が止まっていたかどうかを知りたい場合があったとします。
戦闘機はもう飛び立った後なので、その場所の写真を撮っても無駄だと思うでしょう。
ところがここで、 ”高精度赤外線カメラ” の出番なんです。
日の出直後くらいの早朝に、その場所をこのカメラで写すと、あら不思議、滑走路に戦闘機の影が映っているではありませんか!
どういう事?? 過去を写せるカメラって実在するの?
種明かしをすると、戦闘機が止まっていた場所の真下は、夜露で地面が濡れていません。戦闘機がその地面の上にいたからです。
そこに朝日が当たると、濡れていない部分だけ温度上昇が早くなり、微妙に温度が高くなります。
その温度差をカメラが読み取って影として映した。と言うことです。
なるほど、理屈では分かりますが、考えて実現させた人、天才ですね。
なので、いつでも写せる訳ではなく、夜露が蒸発して温度差がなくなるまでの数時間だけ、と言うことになります。
このカメラは過去を写すだけでなく、透視もできるそうなんです。
例えば、貨物列車のコンテナに戦車を入れて運んでいる場合、このコンテナに朝日が当たっているとします。
戦車は鉄の塊なので、温度変化はコンテナの薄い鉄板の温度変化よりもはるかに遅い。
そうすると、コンテナは太陽光で温められますが、内部の戦車は冷たいままなので、戦車からコンテナに向けて放射されている冷気が、コンテナの内側からコンテナの熱を奪います。
分かりやすく言うと、氷の上をアルミホイルで覆うと、氷と接している部分のアルミが冷たくなって結露します。
アルミホイルを氷から少し浮かすと結露はしなくなりますが、氷の上付近のアルミだけひんやりします。このイメージです。
つまり、中身に近いコンテナの鉄板温度は、冷気が良く当たって低く、中身から遠い部分の鉄板にはそれほど冷気が当たらないため、温度の微妙なグラデーションができます。
なので、 ”高精度赤外線カメラ” でこのコンテナを写すと、中の物体のシルエットが、ぼ-っと浮き出て映るという訳です。
発想、凄すぎです。
次に未来が分かる話。こちらはぐっと身近になります。
皆さん、非破壊検査って聞いたことがありますか?
例えば鉄橋やトンネルのコンクリート内部など、壊さずに中の状態を知りたい時、音や振動を外側から加えて、中の状態を検査します。これが非破壊検査。
車の通行などで金属に繰り返し力が加えられると、最終的には疲労破壊という壊れ方をします。
これは、 力がどんどん加わると、 金属の内部に微小な亀裂やズレが次々に発生し、それらが隣通しどんどんつながって大きな亀裂になり、最終的に破壊するというしくみ。
この微小な亀裂やズレが発生する際に、わずかな熱が発生します。
火打石やマッチをこすると火花が発生しますが、イメージ的はそれに近い状態。
このわずかな熱を定期的に測って、その変化の具合から、
前回と同じくらいの発生数だからまだ大丈夫とか、
発生頻度が2倍になったから、あと半年で寿命だな、とかが分かるそうです。
いかがだったでしょうか?たかが温度差と思っていたら、とんでもない利用方法があるものですね。
こんなすごいカメラですが、お値段もすごくて3500万円。家が買えますね。
ちなみに、時間を超絶正確に測定する話も合わせてどうぞ。
“温度差を超絶正確に測定すると、過去や未来が見えてくる。” への1件のフィードバック