コロナバブルに踊らされないためには。

今、株価は30年ぶりの高値水準だそうです。

ニュースやWebでも、これはバブルだ、いや、バブルではない。の激論が飛び交っていて、今、株を買っとかないと、そのうち高すぎて買えなくなるかも、と気が気じゃない人もいると思います。まるで30年前のバブル景気のようですね。

ここで、ちょっと立ち止まって、株価や資産価値とは一体何かを考えてみませんか?

小難しい用語は必要ありません。極端な例を考えれば、あとは程度問題です。

以前、ここに書きましたが、Zoomが流行りはじめた頃は、この1本のテレビ会議ソフトの価値は、世界の航空大手7社の価値より高いという状態でした。

世界中に、5000機の飛行機と空路を有する企業群より、1本のソフトウェアの方が高かったんです。

ちなみにJALやANAは規模が小さくて、この航空大手7社の中には入っていません。

また、自動車を1台も生産せず、配車ソフトで一般人をタクシー運転主にするUberが、フォード/GMの時価総額を抜いたのも、つい最近の話です。

最近の日本での例でいうと、日本発のQRコード決済会社、オリガミペイのオリガミの事例がありますね。

良く知らない人のために、ざっと説明しますと、

日経新聞社が2019年11月に、オリガミの企業価値を417億円と報じていましたが、わずかその3か月後にメルカリがオリガミを買収した価格は259万円。

417億円の1/18000で買収されたニュースに衝撃が走りました。

しかも、買収の条件が、オリガミの従業員9割削減(元オリガミ従業員談)ですから、メルカリはオリガミの加盟店だけが欲しい。と言っているようなもの。

オリガミの買収に成功したメルカリは、実質的に、オリガミの持っていた19万店の加盟店だけを259万円で手にしたことになります。

加盟店を増やすには、それなりの労力と出費が必要ですが、1加盟店を、わずか14円で入手したメルカリの判断が正しかったことは、最近のCMの勢いを見れば分かります。(買収前2000円だった株価は、買収から10か月余りで6000円を超えています)

これらの事例が物語っていることは何でしょうか?

ここで少し話が変わりますが、みなさん、「なんでも鑑定団」という番組を知っていますか?

小汚い?壺やブリキのおもちゃに、何万円、時には何100万円という値がつきます。

また、骨董屋から50万円で買った絵が、「じゃじゃじゃん、1000円!」なんて事もよくあります。

おもちゃや壺は、値が付く前と後で、何か違いができたでしょうか?

仮にあなたは、「絵には興味はあるが、絵を買ったことはない人」だとして、もし、なんでも鑑定団で100万円の価値が付いた絵が50万円で買えるとしたら、買うでしょうか?

娯楽番組なので、こんなことを真剣に考えたことは無いと思いますが、ちょっと考えてみましょう。

これらのモノの特徴は、工業製品と違い、基本的に1点モノなので、原価に意味が無いことです。

これらの価格は、原価計算ではなく、絵には絵の、骨董には骨董の市場があり、その中の団体や興味がある人々の取引額によって値が決まります。

それでも市場原理は働きますから、世の中に10枚しかないと思われていた浮世絵の木版画が、どこかの蔵から100枚見つかった、となると、値は大きく崩れます。

特定の取引市場で取引されている1点モノ商品は、さまざまな人の分析結果から得られる市場価値というものが与えられ、価格が決まります。株の価格もこれと同じです。

この価格は、実質的な原価に関係なく、人気や期待、憶測で上下します。

経済活動が止まっている現在、各種給付金支給と相まって、お金の流動性が低いため、余っているお金は、どうしても株や不動産に集中してしまいます。

これが良く言われる過剰流動性です。

さらに、世界的に見てコロナ被害の少ない日本の市場は、医療体制、清潔さ、治安の良さが再認識され、いわゆる世界のマネーやチャイナマネーが流れ込んでいる状況です。

つまり日本は今、実力以上に人気が出ている状態で、「その道のプロ」達が市場にたくさん参入しています。

株の雑誌の中は、儲け話であふれていますが、プロ集団の中の素人の私は、果たして儲けることができるでしょうか?

今人気の不動産も同じことです。

こちらには実体と原価がありますが、市場は公平ではありません。

なんでも鑑定団で100万円の値がついた絵を50万円で買った私は、儲けを確定させるためには、絵を売らないといけません。

質屋に持って行ったら5万円といわれるかもしれないし、骨董屋だと10万円といわれるかもしれません。

絵の価値と、実際に売買される価格とは、たいていの場合異なります。

判りやすい例だと、20年以上前、クリスチャンラッセンの絵が一世を風靡したのを覚えているでしょうか?

デパートや即席のサロンで、ローンとセットで何10万円という価格でたくさん売られていましたが、現在のSサイズ(家庭サイズ)の販売価格は15万円程度。

”クリスチャンラッセン ヤフオク 平均落札価格” と打ち込めば、どれくらいで売れそうかも判ります。びっくり価格ですね。

鑑定された価値とは、買う人の買い値ではないことを思い知ることになります。

それがレアモノだったとして、もっと高く売れるはずなのに、売るルートを知らない私は、業界の人からみれば良いカモでしかありません。

閉じられた市場には、業者と、そうでない人との間には、圧倒的な情報格差が存在します。

絵を売って儲けたいなら、まずその市場や流通経路を勉強してからです。

不動産も同じです。大手不動産屋は、あなたを儲けさせることに喜びを見出したりはしません。本当に儲かるなら借金をしてでも自分が買います。当然ですね。

収益還元法で、それっぽい試算はできますが、その収益見積りが正しいことを誰か保証してくれるのでしょうか?

私が不動産屋なら、不動産を買いたい客に希望する運用利回りを聞いて、その利回りが確保できるように、収益見積り(家賃)を設定します。当然です。

以前、車を買い換える際、今まで乗っていた車を下取りしてもらうため、ディーラーで見積もると、5万円と言われたことがあります。

余りの安さにカチンときたので、中古車屋や板金修理屋を10件以上回って、ある中古車センターで40万円で買い取ってもらいました。

買値が決まったあと、なぜ高く買ってくれたかを聞いてみたら、当時ロシアでバンタイプの日本車に需要があり、たまたま集中的に仕入れる必要があったからでした。

私の中古車にはドア付近に小さなへこみがあり、そこは修理しにくい場所なので修理代がかかるため、どこも安く見積もっていたのですが、ロシア人はそんな傷は全く気にしないそうで、この場合マイナス査定になりませんでした。

足で生きた情報を集め、買い手の事情やタイミングを知って、適切な需要を見極めることが、とても重要だという事を学びました。

同様に不動産で運用収益を上げたいなら、近隣の似た不動産の実際の運用利回りを、少なくとも2,3件は把握して(自分で調べて)、将来もその利回りが確保できそうか、自分でシミュレーションしておく必要があります。

30年前のバブル景気の時は、皇居の地価とカリフォルニア州と同じで、東京の土地の値段でアメリカ全土が買えるという、今では考えられない状態でした。

またリーマンショックの引き金となった、”忍者ローン“は、英語の読み書きができない、収入も資産もないヒスパニック系の買い手の代わりに、ブローカーがまともな説明もせずに申し込みをして、住宅ローンを組ませていたそうです。

冷静に考えれば、どちらもおかしいことが分かりますが、先のZoomの例のように、今でもおかしなことは起こっていて、最後までおかしいことに気付かなかった人が、「ババ」を引くことになります。

おかしいと何となく思っていても、自分で調べようとせず、雑誌やニュースやWebで、まだまだ大丈夫という雰囲気にどっぷり浸かっていたら、感覚もにぶります。

自らの仕事として分刻みで市場を注視しているプロと、1か月遅れの情報を雑誌から得ている私たち、どちらがババを引くかは明らかですね。

ということで、株や不動産に詳しくない人は、手を出さないことが一番です。

どうしても、というなら、公的な関与がある、iDeCoやNISAの範囲にしておくのが無難でしょう。

それでも本格的に市場に参加するなら、先のメルカリの例のように、見かけの価値にまどわされることなく、自分の資産を強化する本質的な価値を見抜く目をもち、適正価格で売買できる知識と手段をもってから、となります。

私には、それだけの目も知識もありませんが。

Russia

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