コロナウイルスが日本で騒がれ始めた2月初旬から2か月経ち、ネットには、さまざまな情報があふれています。
自衛のためには、正確な情報を知っておく必要があるため、少しまとめてみました。
3つの密とか、人と1~2m離れるとかの情報に振り回される前に、なぜそのように言われているか理由を知れば、どの状況でどう行動すれば良いかが分かってきます。
結論を早く知りたい人のためにまず結論。
・風通しのよい、乾燥した部屋で過ごせば感染しにくい。
・接触感染は一定数のウィルスが必要。過度な注意は不要だが、物には出来るだけ触らない。触ったらその手で顔を触らず、出来るだけ早く手洗い。
です。なぜこのように言えるか、詳細を知りたい人は↓。
まず、日本医事新報社の緊急寄稿、”3.ウイルスの感染能力の安定性”によると、
飛沫感染は2m離れると感染しないとされている。広い空間では,2mに到達する前に,種々の大きさのエアロゾル(空気中に浮遊する微小粒子)は乾燥する。60~100μmの大きな粒子でさえ,乾燥して飛沫核になり,インフルエンザウイルスを含む多くのウイルスは乾燥して感染性を失う。とあります。
しかし、湿気のある密室では空中に浮遊するエアロゾル中のウイルスは乾燥を免れるため、秒単位から、数分~30分程度、感染性を保持する ともあります。
つまり、インフルエンザと真逆の対応、部屋を乾燥させることが、感染防止になります。
次に、感染能力(インフルエンザウイルスの場合)については、
点鼻では感受性細胞に到達できるウイルスが限られるが、エアロゾルの噴霧は上気道・下気道の上皮細胞に直接感染するため、100倍以上効率よく感染できる。(エアロゾルによる感染は、点鼻による鼻腔への感染よりも約100分の1のウイルス力価で感染する。)
5~10μmのエアロゾルの沈着部位は鼻腔や上気道に、2~3μm(飛沫核)は吸入時に肺胞に達する。
湿気の高い密室では2m離れていても、くしゃみや咳だけでなく、呼気に含まれる1μm程度のエアロゾルさえ感染性を保持して浮遊し、吸気によって上気道または下気道で感染する。とあります。つまり、
2~3μmの飛沫が体内深く入り込んだら、目や鼻からより100倍感染しやすい。
また、増殖速度についても、
SARSコロナウイルスは,6時間程度で増殖し,105〜6(8)/mL程度のウイルスを産生する。とあるので、(インフルエンザウィルスもほぼ同様)
例えば、3月22日に埼玉スーパーアリーナ行われたイベント会場で感染して、そのイベント帰りにウィルスをまき散らす、ということは、考えにくいことが分かります。
これは、札幌雪祭り(2/4~11)後の、2/21から北海道の患者が爆発的に増えた事を考えると、4/10日くらいから患者が急増しないことで確かめられます。(後6日後ですね。)
逆に、電車通勤時間帯に感染して、その仕事帰り(翌朝の出勤)時に、ウィルスをまき散らす、ということは、充分考えられることだとわかります。
しかし、札幌雪祭りの来場者数が200万人に対し、新宿駅の1日平均乗降者数は350万人、渋谷駅で300万人ですから、東京都の1日当たりの患者増加数が100人程度というのは、驚異的な少なさです。
駅は、3つの密(密閉空間、密集場所、密接場面)が強くそろう場所ですが、1日当たり3000万人を超える接触が毎日あるのに感染が爆発的に広まらず、逆に閉じた施設内でのクラスター発生による濃厚接触の方は90%近い確率で感染しているという事実は、先の緊急寄稿の正しさを裏付けていると言えます。
一番可能性の高い、接触感染についてはどうでしょう?
新型コロナウイルスは空気中で数時間、鉄とプラスチックの表面では少なくとも3日間は留まる可能性がある(New England Journal of Medicine)と言われていますが、
物を介する感染、つまり接触感染は、点鼻(上気道・下気道感染の100倍以上の数が必要)よりも、更に多くのウィルス数が必要とあります。
先日、米国疾病予防管理センター(CDC)発表の調査報告書で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で全乗客を下船させてから最長17日後まで、極めて微量の新型コロナウイルスが発見された、とニュースになりました。
しかし、一定量以上の数がないと接触感染しないことを知っていれば、微量のウィルスの残存に大騒ぎする必要がないことがわかります。
以上まとめると、
・風通しのよい、乾燥した部屋で過ごせば感染しにくい。
・接触感染は一定数のウィルスが必要なので、過度な注意は不要だが、物には出来るだけ触らない。触ったらすぐ手洗い。
となります。
自身の免疫力を維持しておくために、充分な睡眠と栄養の確保は必須です。
しかし、一番有効そうな乾燥の維持について、今後大きな懸念があります。
3月以降になると、湿度がどんどん上昇し、空気中のウィルスがどんどん死ななくなります(↓図グラフ参照)。気温も上昇し、空気中の湿気は冬の何倍にもなるため、冬には数秒で死んでいたウィルスが数10分も生きることになります。
満員電車内に、1回のせきで5万個、1回のくしゃみで10万個まき散らされるウィルスの数㎛の飛沫核が数分間生存すれば、たった1駅利用でも、感染確率は激増することになります。
一般のマスクに飛沫核感染を防ぐ能力はないため、この場合、マスクの着用は有用な対策にはなりません。(せきやくしゃみをする側には必要です)
ダイヤモンド・プリンセス号では、1名の感染者から約700名が感染しました。
感染力は決して低くありません。
飛沫核感染を防ぐ有効な手段がない以上、4月以降は、暖かい湿った日には、人混みを避ける必要があります。
ー追記ー
暖かくなって湿度が上がると、ウィルスも死ににくくなるので、会話による唾液の飛沫を減らす意味で、マスクは有効かもしれません。